ワンコ系Drの熱烈アプローチ
鮎川先生とこんな風に距離を縮めなければ、私はきっかけも掴めず、衛生士になりたいという思いをただ漠然と憧れていただけでとどめていたのだろうと思う。
鮎川先生と近付けたから、ぼんやりとしていたビジョンがはっきりと映し出された。
「下村ちゃんは、衛生士さん、向いてると思ったから」
「え……?」
「だって、素手で義歯拾っちゃうくらいだしね」
そう言って、鮎川先生は思い出したようにプッと吹き出す。
「あっ! それはもう言わないでくださいよ!」
いつもの調子でからかわれて、こっちも反論の言葉と共にぷっと頬を膨らませてみせる。
すると、鮎川先生は両手を広げて「おいで」と私を呼んだ。