ワンコ系Drの熱烈アプローチ
「消毒、ごめんね。ひと段落したとこに持ってきちゃって」
「全然大丈夫ですよ! お疲れ様です」
そう言いながら、浅木さんの変わらぬ腰の低さと気遣いに惚れ惚れしてしまう。
片付けなんて助手さんの仕事。
そう態度にでていた衛生士さんも見てきたから、尚のことだ。
「あの患者さん、なかなか治りませんか?」
浅木さんが持ってきたトレーの上、血液に染まった歯ブラシが載っていた。
それを目にして質問してみると、浅木さんは口元のマスクを顎にずらして苦笑いを浮かべた。
「うん……炎症がなかなか引かなくてね。出血すると、怖くなってブラッシング止めちゃうから、悪循環で」
「そうですか……」
「でも、初診時に比べて良くはなってきてるから、もう少し頑張ってみようかな、と。私はサポートしかできないから、頑張るのは患者さん本人だけどね」
そう言った浅木さんはニコリと笑って「でも、やる気を出させるのは私の役目だから」と言った。