ワンコ系Drの熱烈アプローチ
お店の外に出ると、先に出ていた鮎川先生がスマホを眺めながら私を待っていた。
「鮎川先生、ご馳走様でした」
今日の合コンは男性陣がワリカンで女子分を支払ってくれた。
間が持たずに飲んだり食べたりしていたから、何だか申し訳ない気持ちになっていた。
あの場で一番食べていた気がする。
「なんか勝手に決めちゃったけど、帰る方向で良かったんだよな?」
「え、あ、はい、もちろん。そのつもりでしたし」
「そっか、ならいいけど。ユースケが下村ちゃんに残ってほしそうだったけどな」
「え?」
“ユースケ”とは、確か、夏美の前に座っていた銀行員の彼だ。
「そうでしたか? そんなことないと思いますけど」
確かに少しは引き止められた感じだったけど、私が帰ったところで何の支障もないと思う。