ワンコ系Drの熱烈アプローチ


「鈍感か! まっ、いいけど」


お笑い芸人みたいなツッコミを入れたかと思えば、フッと笑って店前から歩き出す鮎川先生。

意味がわからなくて「何ですかそれ!」と返した声がついでかくなってしまった。


駅に向かって鮎川先生と歩きながら、目を落とした腕時計の針はもうすぐ二十三時を迎える時刻を指していた。

仕事を終えて二十一時前から参加したけど、あっという間に二時間も経っていたらしい。


「しっかし、下村ちゃんが現れるとは思わなかったわ。嘘だろって感じだったし」

「それはこっちのセリフですって。歯科医の人がくるって聞いてたんですけど、まさか鮎川先生だったなんて……」


あの場で顔を合わせた瞬間のお互いの衝撃はかなりのものだったと思われる。


「まぁ結果、鮎川先生で私は間が持ちましたけどね。考えたら目の前に知らない人っての、結構きつかったと思いますし、って、えっ?!」

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