ワンコ系Drの熱烈アプローチ
さっと掴み取った義歯を隠すように自分のハンドタオルに包み込み、持ち主の女性へと差し出す。
受け取った女性は口を押さえたまま、「ありがとうございます」と何度も頭を下げていた。
「いえ!」
頭を下げ返したのは、俺よりも若いだろう女の子だった。
小柄で色白。
長そうな髪を頭の上で一つにまとめ、大きなお団子が印象的。
くりっとした大きな目は黒目がちで、どこか小動物みたいな可愛さがあった。
そんな子が、素手で見ず知らずの他人の義歯を拾うなんて、正直衝撃的な光景だった。
立ち上がったままその光景に見入っていると、電車は下りる駅へといつの間にか到着し、ドアを開いていた。