ワンコ系Drの熱烈アプローチ
義歯を拾った彼女も、俺が下りる駅で電車を下車していった。
呆気にとられながらホームに降り立ち、先に歩いていく彼女の小さな背中を見えなくなるまで見つめる。
あんな親切な子がいるなんて、世の中まだまだ捨てたもんじゃない。
そんなことをぼんやりと思っていた。
普通に考えて、人の義歯を躊躇なく拾えることに驚いた。
普通は真似できるもんじゃない。
そんなことを思いながら初めての職場に出勤し、白衣に着替えて診療室へと出ると、目に焼き付いて離れなかったお団子頭が受付に掛けていた。
まさか――そう思った俺の前に再び現れたのが、下村ちゃんだった。