ワンコ系Drの熱烈アプローチ


でも下村ちゃんは、口を開けば『律己先生、律己先生』と、副院長のことばかりを口にしていた。

それを聞かされる毎日の中で、俺にお近付きになる隙は全く与えられなかった。

いつか、気持ちを伝えられそうな時がくるまで、身近で仲のいいドクターというポジションを保っておこう。

そう思いながら過ごしてきた。

募らせてきた想いは、打ち明けてしまえばもう止められない。


「じょ、冗談……やめてくださいよ」


振り向かせた顔は紅潮していて、視線は定まっていなかった。

下村ちゃんのこんな顔見たことなくて、気持ちを煽られる。


「冗談なんか言ってないんだけど」


蒸気した頬をさらさらと撫でると、顔を逸らすように前を向かれてしまった。

耳まで赤くして、可愛すぎる。

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