ワンコ系Drの熱烈アプローチ
翌日――。
またいつもと変わりない一日が始まった。
だけど、いつもと大きく違うこと。
鮎川先生に好きだと言われ、付き合ってだなんて言われてしまった私は、いつもの診療室で落ち着きなく朝の仕事をこなしている。
昨日はそんな話のあと、鮎川先生はやっぱり普段通りで、緊張のメーターを振り切ってしまった私をよそに、他愛ない話をしながらお酒を楽しんでいた。
それがあまりに普通で、しばらくすると私の方も会話を正常にできるほどに調子が整い、お店を出る頃には“いつもの鮎川先生と私”という感じにまで戻ってきていた。
ギリギリ終電に間に合いそうな時間だったけど、鮎川先生は「こんな時間に女の子の一人歩きはダメ」と、わざわざタクシーで私の独り暮らしの家まで送り届けてくれた。
家に帰って一人になっても、お酒が入っているにもかかわらずなかなか寝付くことができなかった。
あの鮎川先生が私のことを?
嘘だ、信じられない。
その思考のスパイラルに陥っていた。
だけど、今日のことが全て嘘ではなかったのを証明するように、ベッドの中でひたすらもぞもぞしていると、枕元に置いたスマホが鳴って、鮎川先生からのメッセージを受信した。
【今日はありがとう。嘘でも冗談でもないから、ちゃんと考えて。また明日もよろしく】
それを読んだら、ますます眠れなくなってしまった。