ワンコ系Drの熱烈アプローチ
「またって言うな、またって」
「だって、今週入って毎日じゃないですか」
「いいの。てか、今日は牛じゃないし、豚だし」
Vネックの黒いサマーニットに、細身のデニム。
首元にはシルバーのネックレスを揺らして、パーマのかかった髪は、色素の薄いコンパクトマッシュのツーブロック。
細身でスタイリッシュな雰囲気は、美容師とかにいそうなタイプ。
私服になると本当にドクター?と思ってしまうのが、この鮎川健吾先生。
今年の春からうちの医院にきた鮎川先生は、私の五つ歳上で先日二十九歳になったらしい。
それまでは大学病院の小児歯科室で仕事をしていたらしく、若い見た目とフレンドリーな感じが、子どもの患者さんやその親御さんに好印象だ。
うちに来院する子どもの患者さんはだいたいが鮎川先生を指名している。
歯医者に行くのが嫌で泣いて来院する子も、鮎川先生にかかれば帰りは笑顔で帰っていくのだ。