ワンコ系Drの熱烈アプローチ
少し小声で、私の頭に顔を寄せ、鮎川先生が聞いてくる。
受付に私たち以外がいないのがわかっていても、ついキョロキョロと辺りを確認してしまった。
「今日、ですか?」
「うん、今日。仕事終わってから」
今日は仕事後に特に約束などはない。
帰って録画している溜まったドラマでも観ようと思ってたくらいだった。
「いえ……特に予定はないですけど」
「じゃあ、鍋しよ」
「えっ、鍋?! ですか」
振り向いて見上げた私に、鮎川先生はニッと笑って「そう、嫌い?」と小首を傾げる。
「嫌いじゃ、ないです……どちらかというと好きな方かと」
「マジか。じゃあ決まり」
機嫌よく話をまとめた鮎川先生は、「終わったら連絡するから」と言って受付を離れていく。
でも、鍋やるって、どこで?
と、あとになってからその疑問で立ち去った鮎川先生を振り返っていた。