ワンコ系Drの熱烈アプローチ


鮎川先生は特に何の説明もなしにエントランスを入り、オートロックの自動ドアを解錠する。


「家に呼んじゃって、びっくりしてる?」


エレベーターに乗り込みながら、鮎川先生は私の心情を察したようにそんなことを投げかけてくる。

わかりやすいくらいハッとした表情を浮かべてしまった私を見て、鮎川先生はいつも通りの笑みを浮かべた。


「別にいきなり襲ったりとかしないから、大丈夫だし」

「なっ、何言ってんですか!」

「だって、そういう心配してそんな不安そうな顔になってんでしょ」

「違います! これは、ちょっと緊張してるだけで……いいんですか? 私がお邪魔しても」


鮎川先生に好きだと言われてから、つい強気な口調で可愛くない返しをしがちになっている。

意識してしまっているから誤魔化すつもりでそうなりがちだけど、鮎川先生はそれすら見透かしているようで「全然、全く問題ないよ」と余裕な表情を崩さなかった。

< 65 / 121 >

この作品をシェア

pagetop