ワンコ系Drの熱烈アプローチ
「来たことないって言ってたよね、デンタルショー」
「あ、はい。……すごい人入りなんですね」
「まあねー、年に一回だからかな」
混み合う会場エントランスに入ると、来場受付へと立ち寄る。
左右に五ヶ所ずつ窓口を設けた受付では、氏名と勤務先、役職を記入し、来場を証明するホルダーが渡される。
ホルダーには業者が一目見てわかるように、役職が記載されているシステムだった。
大きなイベントや展示が行われる会場には、業界最大手の企業から、多くの業者が自社の製品を売り込んでいる。
「見たいとことかある?」
「いえ、私は特には……先生の見たいとこにお付き合いします」
「じゃあ、気になるとこがあったら言って?」
ドクターと思われる人も多いけど、私と同年代くらいの女性の姿も多く見られる。
口腔衛生関連のブースに集まっているのは、きっと衛生士さんたちなんだろうと思いながら会場を歩いていく。
鮎川先生について何ヶ所か展示を回っていると、「あっ、鮎川先生!」とどこかから女性の声が聞こえてきた。