ワンコ系Drの熱烈アプローチ


「来たことないって言ってたよね、デンタルショー」

「あ、はい。……すごい人入りなんですね」

「まあねー、年に一回だからかな」


混み合う会場エントランスに入ると、来場受付へと立ち寄る。

左右に五ヶ所ずつ窓口を設けた受付では、氏名と勤務先、役職を記入し、来場を証明するホルダーが渡される。

ホルダーには業者が一目見てわかるように、役職が記載されているシステムだった。


大きなイベントや展示が行われる会場には、業界最大手の企業から、多くの業者が自社の製品を売り込んでいる。


「見たいとことかある?」

「いえ、私は特には……先生の見たいとこにお付き合いします」

「じゃあ、気になるとこがあったら言って?」


ドクターと思われる人も多いけど、私と同年代くらいの女性の姿も多く見られる。

口腔衛生関連のブースに集まっているのは、きっと衛生士さんたちなんだろうと思いながら会場を歩いていく。

鮎川先生について何ヶ所か展示を回っていると、「あっ、鮎川先生!」とどこかから女性の声が聞こえてきた。

< 95 / 121 >

この作品をシェア

pagetop