ワンコ系Drの熱烈アプローチ


「先生、顔出すって言いながら全然来てくれないじゃないですかー」

「そうですよ。先生辞めてから、医局が地味ーになっちゃって、みんな暇してるんですからね」


そんな風に抗議されて、鮎川先生はいつも通りの笑みを浮かべる。


「ごめんごめん、近々顔出すから。俺も忙しいんだよ」

「新しい職場がですか?」


一人の人がそう言いながら、そばに佇む私に目を向ける。

「そちらは?」と聞かれ、鮎川先生が「ああ、今の職場の子」と言うと、三人の視線が私の首からさげているホルダーへと向けられた。


「……助手さん、か」


そんな何気ない声に、ぺこりと頭を下げながら、なぜだか肩身が狭いような気持ちになった。

< 97 / 121 >

この作品をシェア

pagetop