無慈悲な部長に甘く求愛されてます
いつもの帰宅ルートと同じ商店街通りを抜けて、スタイリッシュなケーキ屋の裏手に回る。
インターフォンを鳴らすと、冴島さんはそのまま玄関のドアを開け、私にも来るように目で合図をした。
「こんばんは」
リビングのドアを開けたとたん、小さな男の子が冴島さんの脚に飛びつく。
「けんちゃんー!」
「いらっしゃーい。寒かったでしょ。ほら入って入って」
キッチンから出てきた良美さんが笑顔で迎えてくれる。
ここに来るのは二回目だけど、家の中は前回よりも華やかに飾り付けられていた。
折り紙で作った輪っかや三角旗が天井から吊るされ、ダイニングテーブルには色とりどりの料理やデザートが並んでいる。
「おう大河!今日はかっこいい格好してるな」
「けんちゃんと同じ!」
得意げに胸を反らす大河くんはセーターの下にグレーのシャツを着て、赤と青の縞模様のネクタイを締めていた。
髪の毛もちょっとだけセットしてあって、その可愛さに思わず頬が緩む。
「こんばんは、大河くん」