無慈悲な部長に甘く求愛されてます

「……こんばんは」

 私をちらと見上げると、大河くんは冴島さんの脚の向こうに隠れてしまった。

 嫌われた!?と軽くショックを受けていると、良美さんが笑いながら大河くんの背中を叩く。

「大河ー、なに恥ずかしがってんの!ごめんね和花ちゃん。照れてるだけだから気にしないで」

 そう言ってくれたものの、私は本当にここに来てよかったのかな、と改めて疑問に思ってしまう。

 冴島さんから誘われたことが嬉しくて深く考えずについてきたものの、大河くんとは何度か顔を合わせたことがあるくらいで、そんなに話したことがない。

 今日はそんな大河くんのバースデーパーティーなのだ。

「兄貴は?」

「超特急で店閉めてるから、すぐ来るはずだよ」

 良美さんが料理皿にかけてあったラップをはがしながら壁の時計に目をやる。

「それより、あきなちゃんがぼちぼち来るかな」

 そのとき玄関の扉が音を立てて、声が聞こえた。

「おじゃましまーす」

 リビングに顔を出したのはフード付きのコートを羽織った若い女の子だった。
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