無慈悲な部長に甘く求愛されてます
「はは、兄貴もダイエットして使ってよ」
普段とは違って砕けた口調の楽しげな冴島さんを、私はここぞとばかりに目に焼き付ける。
会社では絶対に見ることができないリラックスした表情は、できればカメラに写して保存したいくらいレアだ。
「大くん、これはあきなからね」
ケーキに描かれたキャラクターと同じデザインのノートと消しゴムを手渡され、大河くんがにっこり笑う。
私もあわてて荷物を引き寄せた。
「大河くん、お誕生日おめでとう。なにがいいかわからなかったんだけど、車が好きだって聞いたので……」
冴島さんからは特にプレゼントは用意しなくていいと言われたけれど、やっぱりそういうわけにはいかない。
私が持ってきたのは絵本だった。車が主人公で、たくさんの仲間と出会いながら冒険をする男の子向けの物語だ。
「あら、よかったね大河!ほら、あんたの好きな車がいっぱい出てくるよ。大河、和花ちゃんになんて言うんだっけ?」
きらきらした顔を絵本から上げて、大河くんは恥ずかしそうに言った。
「ありがとう」
「どういたしまして」
照れた姿がまたかわいくて胸がきゅんとする。