無慈悲な部長に甘く求愛されてます
「明菜、それくらいにしておけよ」
「やだ、大丈夫だからついでくださいよ、賢人さん」
良美さんがつくった絶品ポテトサラダを口に運びながら、胸に小さく痛みが走って、思わず振り返る。
冴島さんは顔を真っ赤にしている明菜ちゃんからグラスを取り上げていた。
すこしショックだった。
冴島さんて、女の子を呼び捨てで呼んだりするんだ……。
自分がどう呼ばれているかを思い返して、胸が沈む。
「小松さん」とか「きみ」とか。とても他人行儀だ。
でもしかたないと思う。だって冴島さんと私はただの上司と部下で、私は最近まで彼の会社での姿しか見たことがなかった。
それに比べて明菜ちゃんは、三年前、お店がオープンしたときからアルバイトとしてフルーヴで働いていて、ことあるごとに素の冴島さんと顔を合わせてきている。
彼女のほうが、きっと私よりも本当の冴島さんを知っている。
そう思うと、ますます胸が痛んだ。
「ていうか、あきなともデートしてくださいよ賢人さん」