無慈悲な部長に甘く求愛されてます

「なんだよ、大河と結婚するんじゃないのか」

「それとこれとは別の話でしょー」

 冗談めかして言った冴島さんの腕に明菜ちゃんがしなだれかかる。

「おいおいあきなちゃん、だいぶ酔ってるじゃないか。良美、水持ってきて」

「あ、私、持ってきます」

 陸人さんが奥さんを呼んだのに乗じて、席を立った。

「いいよ和花ちゃん、座ってて」

 そう言ってくれる良美さんになかば頼み込むようにして私はお手伝いをさせてもらった。

 食事の用意や片付けや大河くんの世話で忙しい良美さんを助けたいという気持ちもあったけれど、半分は見たくないものを見ないようにするためだ。

 仲良くやりとりをするふたりをすぐとなりで見ているなんて、できない。

「どう?いい男でしょ、うちのけんちゃん」

 空いた皿やグラスを下げて洗浄済みの食器を拭いていると、となりで食器を洗っている良美さんに小声でしゃべりかけられた。

「え……はい」

 ダイニングテーブルを振り返りながら小さく答える。

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