無慈悲な部長に甘く求愛されてます
これくらいの小さな子としゃべったことなんてまったくない私は、正直どう接すればいいのかわからない。
それでも、私が持ってきた絵本を選んで歩み寄ってきてくれたこの子と、純粋に仲良くなりたかった。
「これ、好き。こっちも好き!」
少しずつ慣れてきたのか、大河くんは笑顔で答えてくれた。
彼の無邪気な笑い方は冴島さんの微笑みにどことなく似ている。
抱きしめたい衝動をこらえながら、私は絵本の厚いページをめくった。
読み進めるうちにすっかり緊張の糸が切れたのか、途中で大河くんは私の膝によじ登ってきた。
子ども特有の甘いような匂いと温かさが心地よくてつい笑みがこぼれる。
「大河くんは大きい車が好きなんだね」
「うん。かっこいいから」
それから顔を傾けて私を見上げると、にっこり笑った。
「わかちゃんも好き」
胸の中に一斉に花が咲いたみたいだった。
「私も好き!」
思わずぎゅっと抱きしめると、大河くんはくすぐったそうにきゃははと笑う。
ふと視線を感じて顔を上げると、冴島さんと目が合った。