無慈悲な部長に甘く求愛されてます

 いつのまに側に来ていたのか、彼はどことなく固い表情で笑いながら、突然大河くんを抱き上げた。

「きゃー」と楽しげな笑い声が上がる。

 冴島さんはそのまま大河くんを肩車すると私を見下ろした。

「悪いね小松さん、子守りさせちゃって」

「え、いえ」

「ほら大河、トランポリン組み立てたから、跳んでみよう。それともこのままがいいか?」

 くるくる回る冴島さんの肩の上で、大河くんが楽しそうに叫ぶ。

 小さな彼にとって、上背のある冴島部長は遊園地のアトラクションと同じらしい。

 大河くんの相手をしながら冴島さんも楽しそうに笑っていた。

 親子みたい。

 一軒家のリビングで、幼い男の子と笑顔たっぷりに過ごす冴島部長。

《付き合うなら、家族を大切にする人がいい》

 いつか真凛に言った自分の言葉が思い出されて、また心臓がきゅっと締まった。
 

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