無慈悲な部長に甘く求愛されてます
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まっすぐ続く通りの向こうに、月が浮かんでいる。
満月までもう一息といった感じの、欠けた月だった。
フルーヴから徒歩五分の帰り道を冴島さんとふたりで歩くのは、三度目だ。
最初の夜はクリスマスだった。
サンタクロースの格好をした冴島部長に面食らい、しかも鬼部長に送ってもらうなんて、とすこし緊張しながらこの通りを歩いていたことを懐かしく思い出す。
「今日はありがとうな、来てくれて」
冴島さんが小さく言った。
会社から切り離された場所なのに、なんとなく背筋が伸びる。
冴島さんの格好が、最初のサンタクロースとも、前回の私服ともちがう、会社で見慣れたスーツ姿だからかもしれない。
「いえ、私のほうこそ、楽しかったです」
家に帰ったらLINEで送ってもらった集合写真をじっくり見直そうと思った。
大好きなケーキ屋さんの素敵な家族の風景に、自分も入っている。
それはとても幸せなことに思えた。