無慈悲な部長に甘く求愛されてます

「……喉がかわいたな」

 突然の言葉に、私は一瞬あっけにとられた。

「水、もらっていいか」

 真面目な顔で言われて、とっさにうなずく。

「あ、はい、お茶淹れますので、よければ上がっていってください」

 自分の心臓の音を感じながら、私は冴島さんを伴ってアパートの階段をのぼった。

 すぐ後ろの、自分の足音とはちがう靴音に、鼓動が大きくなっていく。

 三階の一番奥の部屋にたどり着き、鍵を差し込みながら、部屋の中の状態を思い返す。

 昨日の夜に片付けたばかりだから、大丈夫なはず。

 玄関の扉を大きく開き、「どうぞ」と冴島さんを招き入れた。

「ちょっと待っててくださいね」

 電気を点けてショートブーツを脱ごうとしたら、大きなため息が聞こえた。

 振り返ると、冴島さんが額に指をあて、つかれたように目をつぶっている。

「どうしたんですか?具合でも悪――」

 その瞬間、腕を取られ、壁に押し付けられた。

 蛍光灯の光が、冴島さんの体に遮られる。

「男を簡単に家に上げるものじゃないよ」

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