無慈悲な部長に甘く求愛されてます

 切れ長の目に射抜くように見下ろされて、動けなかった。

「君を見てると、ときどきとても心配になる」

 大きな黒い瞳に私を映して、冴島さんは怒ったように言う。

「なんでもかんでも受け入れすぎだ。ケーキまみれにされても、仕事のアイデアを取られても、当たり屋にぶつかられても、文句ひとつ言わない」

 目を見開く私に、彼は挑むようにつぶやく。

「俺が気づいてないとでも?宮田のアイデアは君が発案したものだろ。企業リストをまとめていたのはあいつじゃなくて君だったはずだ」

 動けなかった。

 全身が凍りついたみたいに、声も出せない。

「君の沸点は、どこにあるんだ」

 低い声がさわりと私の耳をくすぐって心臓がはじけそうになる。

 次の瞬間、温かく湿った感触が冷えた耳を這った。

「あっ」

 大きな手にマフラーを外され、耳たぶにキスをされる。

「さ、冴島さん」

「ちゃんと断らないと、続けるぞ」

 そんな言葉だけで、背筋がぞくぞくしびれる。

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