無慈悲な部長に甘く求愛されてます

 唇が重なっている。

 何度も何度も、角度を変えて、冴島さんが唇を合わせてくる。

 息継ぎもできないくらい荒々しいキスだった。

「んう」 

 唇を割って入り込んできた舌に、すべてを奪われる。

 かすかに残るアルコールの匂いに、頭が真っ白になって、何も考えられなくて、私は冴島さんの服をぎゅっとつかんだ。

 舌が絡み合うごとに思考がとろけて、自分がなくなってしまいそうだ。

 もう、立っていられない。

 そう思ったとき、唇が離れた。

 肩で息をするように私を見下ろして、冴島さんは我に返ったように顔を離す。

 やっとのことで立っている私から目をそらすと、ぎりぎり聞き取れるくらいの小さな声で「すまない」とつぶやいた。

 それからくるりと背中を向けて、玄関のドアに手をかける。

「おやすみ」

 振り返らずに言って、彼は部屋を出ていった。

 ゆっくりと閉まるドアを見つめながら、私はずるずるとその場に座り込む。

 冴島さんのキスに精気をすべて吸い取られたみたいに、心も体も麻痺して、しばらく動けなかった。










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