無慈悲な部長に甘く求愛されてます

「すみません、すぐ直します」

「大丈夫?小松さん。ここのところ調子が悪そうだけど。具合悪いなら無理しないで休んだほうがいいよ」

「はい……すみません」

 ああもう、なにをやってるんだろう私は。

 自己嫌悪に陥りながら、今度こそ間違えないように慎重にテンキーを押した。

 この一週間を振り返ると、ため息しか出ない。

 入社して4年間、必死で気を張ってきたのに、化けの皮が剥がれるみたいに瑣末な失敗を繰り返してばかりだった。

 お茶をこぼしたり、印刷部数を間違えたり、書類を取り違えたり。

 重大なミスをしていないことだけは救いだけど、それも時間の問題かもしれない。

 高速で用紙を吐き出すコピー機を見つめながら、またため息が出る。

 自分が悪いのに、少しずつ腹が立ってきていた。

 だって、動揺するなというほうが無理な話じゃない?

 あんなキスをされたら、誰だって意識するに決まっている。

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