無慈悲な部長に甘く求愛されてます

「印刷終わったなら替わってくれるか?」

 すぐ後ろから低い声がして、私はコピーしたての書類をばさっと落とした。

「おい、大丈夫か」

「す、すみません!」

 あわてて書類をかき集める。

 目の前に落ちていた一枚を拾い上げようとしたら、向こうから伸びてきた手に触れてしまい、私は反射的に手を引っ込めた。

 しゃがんで書類集めを手伝ってくれている冴島さんを見ないようにしながら、どうにか声を絞り出す。

「すみません、大丈夫ですから」 

 なにか言われる前に大急ぎで書類をかき集め、その場を立ち去った。

 心臓がばくばく鳴っている。

 席に戻って書類を整えながら、どうしようもなくへなちょこな自分に、泣きたくなった。


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