無慈悲な部長に甘く求愛されてます



「どうしちゃったの和花。ここのところ、ぼんやり炸裂じゃない」

 乳液をしみこませたコットンで丹念に顔をなでながら、真凛がつぶやく。

 鏡越しに目が合って、私はため息と同時に肩を落とした。

「ちょっと、心が乱れてて……」

 昼食後、真凛はパウダールームで念入りに化粧を直している。

 私の目には真凛の化粧が崩れているようには見えないし、むしろメイクなんてしなくても美しいのだからそんなに念入りにしなくてもいいのでは?と思うのだけど、真凛は命でも掛かっているみたいに入念にパウダーをはたく。

 なんでも彼女のキャラ的に妥協は許されないのだとか。

 男性たちに舐められないように化粧で完璧に武装する。それが真凛の会社でのあり方らしい。

「原因は仕事?それともプライベート?」

「プライベート……かな」

 冴島さんは上司ではあるけれど、あの出来事は会社とは関係がない。


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