無慈悲な部長に甘く求愛されてます
 


 それから一週間、私は自分がつくったルールにのっとって動いた。

 すなわち、冴島部長とは挨拶はしても顔は見ないこと。

 話しかける必要があるときは、目が合わないように彼のネクタイに意識を向けること。

 出勤・帰宅時間が重ならないように注意すること。などなど。

 今のところ大きな失敗はしていないけれど、心身ともに疲労困憊だった。

 ただでさえ普段から気を張って仕事をしていたのに、自分ルールでますますがんじがらめになって、帰宅すると電池が切れたみたいに眠ってしまう。

 夜ゆっくりお風呂に入らず、朝あわててシャワーを浴びてくるせいで疲れが取れず、一日ごとに疲労が蓄積していた。

 悪循環だ。

 しかもどういうわけか、日が経つごとに冴島さんへの想いが募っている。

 彼が恋しいにもかかわらず避けるという真逆の行動を取っているから、心のバランスが崩れているのだ。

 自分ルールは諸刃の剣だったのだと、今更ながら気づく。

 一時しのぎの方法でやっていけるとは思っていなかったけれど、想像していたよりも早く限界が近づいてきている。

 どうにかしなきゃ。

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