無慈悲な部長に甘く求愛されてます

「小松、これ入力しておいて」

 宮田くんに声をかけられたのは、ミーティングが終わってドアを出ようとしたときだった。

 渡された書類の束を見て、私はそっと目を上げる。

「これって、さっき宮田くんが頼まれたやつですよね」

「俺、16時から外出だからさ。今日中にやるのは無理なんだよ。代わりに頼む」

「……」

 それなら、どうしてさっきそう言わなかったのだろうと、口には出さずに思う。

 宮田くんはたしかに事務処理メインの私とちがって外出が多く忙しい人だけど、できない仕事を引き受けておいて私に回すというのはどうなのだろう。

 しかも彼のことだから、私が作業をしてもきっと自分の手柄にしてしまうにちがいない。

「な、小松なら今日中にできるだろ」

 ぐいと書類を押し付けられる。

 私は私で仕事を抱えているのだから、いくらなんでも今日中になんて無理だ。

 どう断ろうか考えていると、

「宮田」

 低い声にどきりとした。

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