無慈悲な部長に甘く求愛されてます

「え」

 後頭部を引き寄せられて、また唇が重なる。

 さっきより深いキスに、食べたばかりのラズベリーの香りがただよって脳を刺激した。

 甘い香りが体の中まで入り込むようで、背中がびりびり痺れる。

 立っていられずにソファに沈む私を、冴島さんは逃がしてくれない。

 覆いかぶさってきて、またキス。

「ちょっと、賢人さん」

 唇が離れた隙に抗議するつもりでにらみつけると、彼はあっけらかんと言った。

「毎日こうしてればそれが当たり前になって、意識しなくなるだろ」

 ソファに押し倒されて、私は小さく悲鳴を上げた。

「や、ダメですってば!明日も仕事!」

「悪い。抑えられそうにない」


 そうしてまたキスの雨が降る。

 ホダカ・ホールディングスの営業部門を統括する冴島賢人は、鬼上司だと思っていたけれど、もしかすると本当は、狼上司だったのかもしれない。

 そんな彼のキスは、大好きなフルーヴのケーキよりも中毒性があって、とろけるように甘い。





【鬼上司のギャップは反則です♡。完】
< 157 / 180 >

この作品をシェア

pagetop