無慈悲な部長に甘く求愛されてます
「そうじゃなくて、俺のおかげだろ?」
そういたずらっぽく笑うに決まっている。
冴島さんが日夜私を甘やかしているおかげで、私がちょっとやそっとのことで動揺しなくなったと主張するはずだ。
仕事がしづらくなるから、しばらくふたりの関係は秘密にしておこうと決めたのに、家でもオフィスでも関係なく、彼は私の頭をなでたり、体に触れたり、どきっとするようなことを言ったりする。
本人曰く、外ではちゃんと人がいない場所を選んでいるということだけど……。
バレるのは時間の問題な気がする。
だって、オフィスで鬼の仮面をかぶっている冴島さんの素顔は、とてつもなく甘い。
急ぎの仕事が重なって残業をしていると、冴島さんから携帯にメッセージが入った。
外出先から直帰する予定だったけれど、社に戻ってくることにしたらしい。
私ももうすぐ終わります、とメッセージを送ると、すぐに返事が来て一緒に帰ることになった。