無慈悲な部長に甘く求愛されてます
見事に統一感がなくて、少し笑えた。
こんな時間でも、スピーカーからはクリスマスソングが流れてくる。
閉まっている店も多いけれど、帰宅を急ぐ人々で通りはそれなりに賑わっていた。
私の一番のお気に入りである『パティスリー・フルーヴ』は、商店街が途切れたところにぽつんとたたずんでいる。
さすがにもう営業時間は終わってるよね……?
でも、どうしても食べたい。
クリスマスで特別に営業時間が延びてたりしないかな。
最初にケーキのことを考えたときから、私の口はフルーヴに、つまりはフルーヴのケーキを食べなければどうにも収まりのつかない口になっているのだ。
諦めつつも一縷の望みを託して通りを歩いていく。
朝の出勤時にここを歩くと漂ってくる甘い匂いは、さすがに今はもうしない。
やっぱりだめかな。
商店街の種々雑多な雰囲気とは一線を画す白と黒のシックな造りの建物が見えてくる。