無慈悲な部長に甘く求愛されてます

 パティスリー・フルーヴは三年前にオープンしたばかりのスタイリッシュな外観のケーキ屋で、軒先にはかわいいアイアン製のガーデンベンチが置かれている。

 壁も自動ドアも白一色で、窓は顔の高さにある小さなものがひとつあるだけ。外からちょうどショーケースだけが見えるようになっている。

 家族経営の小さなお店だけど、ケーキだけで勝負をしているのだ。

 中の様子がわかりにくくて一見入りづらいものの、私の知る限り、フルーヴはお客が絶えない。

 店内からは明かりが漏れていた。だけど店先に置かれているはずの立て看板はすでに撤収されている。

 やっぱり閉店かあ……。

 がっかりして店の前に立ち尽くしていると、突然自動ドアが開いて中から人が出てきた。

 目に飛び込んできたのは赤と白。サンタクロースの格好をした男性だ。

 とっさにお店の人だと思った。

 クリスマスにサンタの格好をして商売をしている店は少なくない。
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