無慈悲な部長に甘く求愛されてます
 うつむいてしまった彼に、私は思い切ってきいてみる。

「あの、口ひげ、取らないんですか?」

 差し出がましいと思いつつ、言わずにはいられない。

「クリームがおもいっきりついちゃってますけど……」

 私の顔面にヒットしたケーキはよほど勢いよく飛び散ったらしい。

 私のコートのみならず、サンタの衣装やもさもさのひげまで汚してしまっている。

「いや……その」

 言いよどむ彼をよくよく見ると、肌にもクリームが少しはねている。

「あ、すみません、私の心配ばかりしてもらっちゃって。あの、お気になさらず顔を洗ってきてください」

「いや、しかし」

「ああ、ごめんなさい。お邪魔ですよねこんな時間に。すみません、もう帰りますので」

 ソファから立ち上がろうとすると、サンタは慌てたように言った。

「いや、そうじゃなくて」
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