無慈悲な部長に甘く求愛されてます
いつもきちんとセットされた髪が多少乱れてはいるけれど、顔も声も同じだし、私の名前も知っていたし、もう疑う余地はなかった。
サンタクロースの服を着て絨毯の上に正座しているこの人は、会社で鬼上司と囁かれる営業統括部長の冴島賢人(けんと)なのだ。
「冴島部長……どうして、ここに?」
「言っただろ。兄がケーキ屋をやっていて、今日だけ手伝いを頼まれたんだ」
そう言ってから、部長は苦虫をかみつぶしたような顔になる。
「悪いが、このことは黙っていてくれないか」
いまいち状況が飲み込めないまま「え?」と返すと、彼は気まずそうに顔を逸らした。
「副業は就業規則で禁止されてる。まあ今日のこれは副業ではないんだが……そもそも、俺だとバレるはずじゃなかったんだ」
「す、すみません……」
「いや、君が悪いわけじゃない。むしろ被害者だろ。全部俺の不注意のせいだ」
もう一度「すまない」と言って、冴島部長は正座からあぐらに足をくずし肩を落とした。
サンタクロースの服を着て絨毯の上に正座しているこの人は、会社で鬼上司と囁かれる営業統括部長の冴島賢人(けんと)なのだ。
「冴島部長……どうして、ここに?」
「言っただろ。兄がケーキ屋をやっていて、今日だけ手伝いを頼まれたんだ」
そう言ってから、部長は苦虫をかみつぶしたような顔になる。
「悪いが、このことは黙っていてくれないか」
いまいち状況が飲み込めないまま「え?」と返すと、彼は気まずそうに顔を逸らした。
「副業は就業規則で禁止されてる。まあ今日のこれは副業ではないんだが……そもそも、俺だとバレるはずじゃなかったんだ」
「す、すみません……」
「いや、君が悪いわけじゃない。むしろ被害者だろ。全部俺の不注意のせいだ」
もう一度「すまない」と言って、冴島部長は正座からあぐらに足をくずし肩を落とした。