無慈悲な部長に甘く求愛されてます
「は?」
「いえ……サンタの格好、かわいいなと思って……」
鬼上司という異名からはとうてい結びつかないなと思って。
心の中だけで付け加えていると、部長が勢いよく顔を伏せた。
びっくりして見ると、耳まで真っ赤になっている。
「頼むから、本当に、誰にも言わないでくれ」
右手で顔を押さえながらうめくように言われて、私はうなだれる彼をまじまじと見つめてしまった。
ふだん滅多にお目にかかることのないつむじが見える。
なんだか、変な感じ。
普段見慣れている姿から想像もできない表情や仕草を目の当たりにしているせいか、冴島部長がかわいく見える。
「言わないです、誰にも。約束します」
目を上げる部長と視線がぶつかって、私は「信用してください」と言うかわりに微笑んだ。すると彼はまたしてもうつむく。
「助かるよ」
ぼそりと部長の声が聞こえたとき、リビングのドアが開いて女の人が入ってきた。