無慈悲な部長に甘く求愛されてます
会話のないまま、私たちは外灯が照らす通りを進んでいった。
すぐとなりを、鬼上司と言われる冴島部長が歩いている。しかもサンタクロースの格好をして。
やっぱり、いつもとは違う、特別な夜だと思った。
この夜のことは、多分、一生記憶に残るだろうな。
「あ、そこです」
三階建ての木造アパート、エバーハイツが見えてきて、私は足を止めた。
送ってくれたサンタクロースにぺこりと頭を下げる。
「ありがとうございました」
「いや、今日は悪かった。それじゃあ」
「はい、おやすみなさい」
部長は表情を変えないまま踵を返した。
アパートの前に立ったまま、私は来た道を戻っていく背中をじっと見送る。
透き通った空気に、月が冴え渡っている。