無慈悲な部長に甘く求愛されてます

 そして後ろに営業部門と生産部門がいっしょになった執務デスクの列があった。

 江田部長と通路を挟んで並ぶように、つまりは私の右斜めうしろに、グループ企業をひっくるめてすべての営業部門を統括する冴島部長が座っている。

 あのクリスマスの夜以来、私はオフィスの冴島部長を観察するようになっていた。

 前までは全然意識していなかったのに、今では声が聞こえると意識がもっていかれるし、彼が席を立つとつい目で追ってしまう。

 これまで営業の人たちが囁く『鬼上司』という言葉ばかりが耳に入ってきて、部長本人のことはろくに見ていなかった。

 でも、私はあの日、サンタクロースの衣装を着て恥ずかしそうにうつむいた冴島賢人を目撃してしまったのだ。

 そんな彼が『鬼』だなんて。

 信じられない思いで会社での部長を見るようになったわけだけど、結局私は混乱するだけだった。

 会社での冴島部長は、いつも眉間に皺を寄せ、不機嫌そうにしている。
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