無慈悲な部長に甘く求愛されてます
「急で悪いんだけど小松さん、来週からPMIチームのヘルプに入ってくれるかな」
「え!?」
私は思わず冴島部長を振り返った。彼は厳しい表情のままパソコン画面に向かっている。
「作業が難航してるみたいでね。チームセクレタリーとしてサポートしてあげて。詳しいことは冴島部長に聞いてくれる?」
優しげに微笑む江田部長のフレームレスのメガネを見つめ返す。
のどに引っかかって声がなかなか出てこず、私は黙ったままどうにかうなずいた。
この会社におけるチームセクレタリーは、チーム全体のスケジュールを管理したり補佐をしたりする、プロジェクトチーム自体の秘書みたいなものだ。
これまでに何度かその役割を担ったことはあったけれど、冴島部長が統括する統合チームに就くのははじめてだった。
「大丈夫かな、私……」
日当たりのいい窓際でお弁当を広げると、正面で真凛がサンドウィッチのフィルムを剥がしながら言う。
「普段通りに仕事してれば大丈夫でしょ。素の”ぼんやり“が出るとどうかわからないけど」