無慈悲な部長に甘く求愛されてます
「冗談も通じねえのか。ああいやだ。これだから堅い女は。その点、小松ちゃんはいいよな」
とりあえずニコニコ笑っている私だけれど、内心では早くビリヤードに戻ってほしかった。
池崎さんはムードメーカー的な存在で職場を明るくしてくれる人だけど、ときどき思い出したように私たちをからかいに来るからすこし面倒だ。
「仕事もきちんとやるけど、自己主張しすぎないっていうか。一歩下がって俺たちを見守ってくれる大和撫子っていうか。いいよ小松ちゃん。癒し系だよ。癒し系女子の弁当、食べたいなあ」
「はあ……」
愛想笑いもそろそろ限界、と思っていると、池崎さんの後ろから声が聞こえた。
「すまん、ちょっといいか」
池崎さんが振り向いて「あ」と声を上げる。
「冴島部長、どうしたんすか」
「おまえじゃなくて、彼女に用がある」
冴島部長と目が合って、心臓が跳ねた。
「あ、はい。私ですか?」