無慈悲な部長に甘く求愛されてます

「江田さんから聞いてると思うが、チームセクレタリーの件で。ああ、食事が終わってからで構わない」

 立ち上がろうとする私を制して、冴島部長は池崎さんに視線を戻した。

 ビリヤードのキューを大事そうに握っている部下をじろりと睨む。

「リフレッシュも大事だが、午後イチの営業会議で使う資料はできてるんだろうな?」

「あ……やべ、すいません。すぐ用意します」

 キューを放り出して執務スペースに戻っていく背中をあきれたように見送ってから、冴島部長は私たちのほうに向き直る。

 池崎さんと並んだ冴島部長は、やっぱり背が高かった。もしかすると180センチくらいあるのかもしれない。

 そんな人に威圧感たっぷりに見下ろされて固まっていると、彼は真凛と私を交互に見て、小さく言った。

「イヤなことははっきり断っていい。なにかやりづらいことがあれば、いつでも上長に相談するように」

 そう言ってから、冴島部長は私にぴたりと視線を合わせた。

「それから、小松さん」

「は、はい」
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