無慈悲な部長に甘く求愛されてます
会社で目が合うことはほとんどなかったけれど、さっきは冴島部長からまっすぐ視線をぶつけてきた。
黒目がちの切れ長な目に、射抜かれるようだった。
「普段こわい人に、あんなふうな優しさを見せられたら、きゅんとするわ」
他人事のように心情を吐露する真凛の声を聞きながら、私はお弁当箱に向き直る。
なにか言いかけてたけど、なんだったのだろう。
冴島部長の真正面から見た顔は、やっぱりアクなく整っていて、だけどクリスマスのときのような柔らかさは少しも見受けられなかった。
きっと、仕事の話だったんだよね……?
そう思いながらも、自分の心臓の音が、少しずつ大きくなっていくのを感じた。