無慈悲な部長に甘く求愛されてます

「わかっていると思うが、このプロジェクトはいかに人心掌握ができるかが鍵だ。底の浅い考えは見抜かれるぞ。気を引き締めていけ」

 冴島部長の鋭い声が飛んで会議が締めくくられた。

 メンバーたちが忙しそうに部屋を出て行き、ひとり残された私はノートパソコンと向き合って、メモをもとにミーティングの内容をまとめていった。

 打ち合わせをひとつ終えただけなのに、べったりとした疲労感にまとわりつかれているみたい。

 こんなときは甘いものを食べたくなる。

 というか、私はすでに朝からフルーヴのチョコレートケーキが食べたくて仕方がなかった。

 チームに参加して一週間とすこし、気が付けば一月の終わりにさしかかっている。

 お正月気分なんてこの会社にはじめから存在していなかったけれど、それでも世の中がバレンタインの準備期間になっていることに改めて驚いた。

 テレビCMも、電車の吊り広告も、チョコだらけ。

 つい昨日、実家でお雑煮を食べていたのに、と時の流れの早さに戸惑いながら、キーを叩いて議事録を仕上げていく。

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