無慈悲な部長に甘く求愛されてます

 はじめて見る私服姿は、部長のスタイルの良さを存分に際立たせていた。

 清潔感のあるシンプルな装いがまたいい。

 スーツ姿もかっこいいけれど、私服姿にはまたちがった魅力がある。でも……。

 私は手ぶらの部長を上から下まで眺めて、遠慮がちに尋ねる。

「寒くないですか?」

 晴れているとはいえ、今日の気温は10度に届かない。

 コートなしではさすがに厳しいんじゃないだろうか。

 心配していると、部長は、ふ、と息を漏らした。

 私から顔を逸らし、口元に右手の甲をあてている。

 笑ったのだとわかるのに、またすこし時間がかかった。

「車で来たからな。ほら、出かけるぞ。さっさと乗れ」

 部長は深いブルーの車に近づくと、助手席のドアを開けた。

「……え?」

 私が休日でぼんやりしているからだろうか。

 部長の言っていることが理解できない。

 そもそも、私服姿の部長というのがあまりにも日常からかけ離れすぎていて、頭の処理が間に合っていなかった。

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