無慈悲な部長に甘く求愛されてます
私は土曜日なのに、なんで部長と一緒にいるんだっけ?
というか、この高級車の持ち主が冴島部長ってこと?
そんな根本の疑問で頭の中がいっぱいになっていると、彼がつぶやいた。
「おい、早く乗れ。さすがに外で突っ立ってると寒い」
「は、はい。すみません」
部長が開いてくれているドアに近づいてはっとする。
私なんかが冴島部長の車の助手席に乗るなんておこがましい。
「あの、私、後部座席で十分ですので、後ろに乗ります、後ろに、あれ」
後ろのドアを開こうとしたけれど、車にはドアが左右に一枚ずつしかついていなかった。
挙動不審になっている私を見て、部長がまた、ふ、と笑う。
「あいにく、スポーツタイプなんで後ろは狭いんだ。おとなしく助手席に座ってくれ」
「は……はい」
おずおずと私が車に乗り込むと、部長はドアを閉めて運転席に回り込む。
車内はほんのすこし、甘い香りがした。フルーヴのケーキの匂いだとすぐに気づく。
「あの、どこに行くんですか?」