無慈悲な部長に甘く求愛されてます

 慣れない革のシートの感触に縮こまっていると、運転席側から急に部長の体がかぶさってきた。

「えっ」

 心臓がひときわ大きく跳ねる。

 広い胸が迫ってきて、長い腕が私の左肩越しに伸ばされたと思ったら、部長の体はすぐに離れていった。

 目を白黒させている私をよそに、部長は座席脇のバックルに金具を差し込む。

「シートベルト、忘れないようにな」

 カチリと音がして、私は革のシートに固定された。

 心臓が破裂しそうだった。

 自分でも顔が真っ赤になっていくのがわかる。

「す、すみません、普段めったに車に乗らないので……気をつけます」

 恥ずかしくてたまらなかった。

 何を勘違いしているんだろう私は!

 部長はきっといつも彼女のシートベルトを今みたいに締めてあげているのだ。

 だから今みたいな動作が癖になっているに違いない。

 ふと、いつかの真凛のセリフを思い出した。

『部長の彼女ってどんな人なんだろう。あの鬼部長と一緒にいられるって、すごくない?』

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