無慈悲な部長に甘く求愛されてます


 独り身にとって、クリスマスは特別な日だ。

 恋人や家族がいる人にとって特別であるのとは、またちがった意味合いで。

 毎日会社で忙しく働いているあいだは忘れてしまっている感覚を、普段は閉じ込めていられる感覚を、街や街路樹を彩る電飾や人々からあふれだす浮かれた雰囲気が、思い出させてしまう。

 ひんやりと冴えた空気とあいまって、よけいに強く感じさせる。

「孤独だわ……」

 キャンドルライトが揺らめくテーブルの向こうで、真凛(まりん)がため息をついた。

「そんな、しみじみ言わないで。せっかくの豪華ディナーだし、楽しもうよ」

 苦笑しながら私がシャンパンのグラスを掲げると、真凛も仕方ないというようにグラスの細いステムを持ち上げた。

 店内は照明がしぼられていて、各テーブルに置かれたキャンドルライトが雰囲気たっぷりに相手を照らしている。

 三割増しくらいに映る絶妙な光加減のなか、真凛が野菜と魚介のゼリー寄せにナイフを入れた。

 もっとも、真凛は割増なんてしなくても十分に美人だ。

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