無慈悲な部長に甘く求愛されてます

「そんなに、笑いますか」

 気恥ずかしくなってうつむくと、彼は「ああ悪い」といって私に目を戻した。

「なんというか、小松さんは会社にいるときとずいぶんイメージがちがう」

 それはあなたもです、と心のなかでつぶやいた。

 冴島さんはきっと、会社ではわざと鬼の仮面をかぶっているのだ。

 なにか理由があって、部下たちに厳しい態度を取っている。

 そうとしか考えられなかった。

 だって休日の冴島さんは子供みたいに笑うんだもの。


 それっきり、会話が途切れても冴島さんの視線を感じた。

 会社にいるときと反対だ。

 彼に観察されている。

 そう自覚しながら、私はメイン料理を平らげ、最後に出てきた二種類のデザートもきれいに片付けた。

 鮮魚のムニエルを食べていたときよりもずっと、胸がいっぱいだった。







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