無慈悲な部長に甘く求愛されてます
「あの、今日はいろいろとありがとうございました」
エレベーターで地下三階の駐車場に向かいながら、私はぺこりと頭を下げた。
結局、お金は一銭も払っていない。
出そうとしても出させてくれなかった、というほうが正しいけれど。
「いや、今日のはお詫びだから。礼を言われることじゃない」
車に戻ると、冴島さんはエンジンをスタートさせながら言った。
「最後に一ヶ所だけ、付き合ってくれるか?」
横目で言われ、心臓が鳴った。
「……はい」
なんだかもう、このまま連れ去られてもいいような気がした。
夢のような一日を過ごして、私は部長に特別な感情を抱いてしまっている。
会社の人は恋愛対象じゃない、なんて真凛に言っておいて、なんという矛盾。
鬼上司のギャップなんて、ずるいですよ冴島部長。
「着いたよ」
冴島さんの静かな声が聞こえて、私は顔を上げた。