無慈悲な部長に甘く求愛されてます

「賢人さん、彼女ができたんですか……?」

 泣きそうな声に、私はあわてて口を挟む。

「いえいえ、違います。彼女でも、デートでもないですから」

 まだハタチそこそこといった感じの彼女は、疑わしそうに私を一瞥し、冴島さんに視線を戻した。

 若さゆえの無鉄砲な魅力みたいなものを全身から発しながら、彼女は冴島さんに「どこに行ってたんですか」と今日のことを尋ねる。

「彼女と買い物をして、食事をしてきたんだ」

 私に視線をよこしながら説明する彼に、アルバイトの彼女は頬を引きつらせた。

「それって、やっぱりデートだったんじゃ……」

 あからさまに警戒の色を浮かべる彼女を見て、私は純粋に驚いていた。

 ひとまわりくらい年下の女の子から好意をもたれるなんて、冴島さんはすごい。

 だけど同時に、納得もする。

 冴島部長は本当はすごく優しいし、無邪気な顔で笑う姿はとても魅力的だ。

 アルバイトの彼女がそんな冴島さんの本当の姿を知っているなら、好きになるのも当然かもしれない。
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